Forsaken kiss

2023/04/12


この日、この薄汚れた路地裏で――『高嶺千弘』は、一度死んだ。

ざあざあと耳障りな雨音が、ようやく鼓膜に伝わってくる。いつの間にか降り出した雨はすっかり本降りとなっていて、走り回るうち見知らぬ薄暗い路地裏にいた。人々の喧騒は遠く、ただ雨音と遠くに聞こえる雷鳴が微かにするばかり。アスファルトを打つ雨粒の音が、他の全ての音を打ち消していた。……対面する彼女の呼吸音も、鼓動さえ。濡れそぼった身体からはあの輝くような情熱と、夢と理想を抱いて親元を飛び出してまで叶えたいと強く焦がれた焦燥は消え失せていた。ずっとそこにあったはずの熱が、灯が消えて。残るのは大きな喪失感と虚脱感。抑えていた恐怖心が蓋をこじ開け、溢れ出る。ざあざあ、ごうごうと音を立ててこれまで築いた|高嶺千弘《俺自身》を呑み込み覆い隠していく。
俺が俺でいるために、最愛の人が背を押し笑顔で支え、俺の新作が出るたびに喜んでくれていた喜色満面の様すらも今は遠い。頬を伝う涙と、抱き締めた彼女の濡れていつもよりちいさく感じる身体だけが温かくて――ただ、この熱までも失いたくないと縋る気持ちが強くなる。腕の中の彼女は、傷ついた俺を傷つけないように恋人の存在が起因になってしまった今回の騒動に動揺し、同じように傷ついた心を必死に押し隠しているというのに、俺はそれすらも気付かないフリをして。ただ胎の底で燻るように大きくなっていく、身体の内側を灼く昏い感情の焔を、先までの情熱の代替品にしようとしている。まんじりともせずただ大人しく俺の意に従うのは、同意したばかりの『自分だけは裏切らない』『俺がどうなっても、変わらずにこの愛を受け入れる』『一緒に堕ちる』という約束を果たすため。もうここから、彼女の俺への恭順の意を示す意思表示は始まっていた。
……ああ、本当に可愛い子。独りぼっちになることを恐れ、欣然と努力してきた夢を二度らなずと《《俺のことが好きだ》》という子に打ち砕かれ、遂には恐怖症をも超えて唯一素で触れられる相手でも在った恋人を信じられなくなるかもしれない恐怖に呑まれ、夢も憧れも在ったはずの輝かしい未来も捨てて……ただ、亡霊や残滓にしかなれない男をそれでも支えたいというのだから。ほんとうに、キミはどこまでも俺に甘い。
「……帰ろっか、久遠ちゃん?……事務所の事はもういいの、俺とキミの家に帰りたい。……いいでしょ?」
「……はい。千弘さんと私……ふたりの家に帰りましょっか」
沈痛な表情を堪えながら薄く笑って、そう頷いた彼女のすっかり冷え切った手を取り、俺たちは帰路を歩く。歩調を合わせて、いつもみたいに隣に並んで。いつもと違うのは、互いにひと言も発さなかったこと。ただ、繋いだ手をときどき互いの存在を確かめるように強く握って、指を絡ませ何度も何度も確かめた。
本当にこの先、一生なにひとつの自由が許されないとしても、キミは俺を受け容れてただ俺の愛を受け止め包んでくれますか?静かにしずかに、壊れて狂っていく俺自身を――当の俺が受け容れられないとしても、久遠ちゃんは信じて愛してくれますか。
恐怖で張り付いて、声にならない問いを繋いだ指先に込めて。安心させるように、何度もぎゅうと込められ返す力にようやく俺は呼吸をすることを許されている。

◇ ◆ ◇

俺が家に着いてまず最初にやったのは、濡れた服を脱ぐことでも身体を拭くことでもなく、ファンからの贈り物を丹念に自らの手で捨て去ることだった。俺の仕事が、頑張りが認められたようで嬉しかったそれらの功績はつい今朝まではトロフィーとして家の中に飾られていた。でももう、俺には要らない。ファンの子にすら裏切られて盗聴され、彼女との生活音声を悪意を持った形で流布された今では、それを見ても冷ややかな気持ちになるだけだ。俺はもう、『チヒロ』の肩書を捨ててきたのだから。要らない、要らない。全部要らない。俺の手元にあるものは、彼女だけで良い。俺を裏切り傷つける他の何もかもは必要ない。
俺の何が悪かった?ただ受け容れてほしいだけ。俺は|自分の仕事《AV男優》を誇りにしてきたし、自分で選んでこの仕事に就いた。少しでも世間の見る目が変わりますように、素敵な仕事だと思ってくれますように、と。ただそれだけを願って何度も浴びせられる心無い言葉にも奮起して、笑顔でいなし続けてきた。例え一方的な好意を押し付けられて『お前がやっていることは〝普通〟じゃない』と何度共演した女優に言われても。それで女の子が苦手になって、触れれば体調を崩してしまうような恐怖心を植え付けられても。それでも俺にとってのこの仕事は夢であり希望であり憧れだったから、望んで無理をし続けた。天職だと信じて、笑顔で俺の仕事の成果を喜んでくれる彼女と一緒にいるのは、本当に心の底から嬉しかったんだ。
花も、手紙もなにもかもを乱雑にゴミ箱に放り捨てると、ようやく家の中でも怯えずに呼吸ができる。そう思って振り向いた視線の先、揺れる瞳を隠せずに無言で俺のその行動を凝視していた彼女の表情は、薄い笑顔を貼り付けて凍り付いていた。
「……ん?ああ、びっくりさせちゃったかな……でも、さっきみたいに何かあったらって思ったら落ち着かないじゃない?」
「……そうですね、あんな事があった後だと、不安……ですもんね……!」
俺のその言葉に我に返ったように、なんとか声を振り絞って彼女は俺を安心させるように笑う。戸惑いを笑顔で覆い隠して、これから先の変質した俺を受け容れるために。これが今日から先の俺なのだと、噛みしめて受け容れていく。
「ふふっ、うん♡これでようやく二人っきりだね……久遠ちゃん?」
言いながら手を引いて、彼女をまた腕の中に閉じ込めた。どこにも行かないで、もっともっと俺にキミを信じさせて。キミだけは裏切らない、変わらないって。この愛は変わらないって、気持ちが離れたりするわけないって……信じさせて。俺と一緒に雁字搦めになって、はやくその『善性』と『理性』を捨ててよ。
抱き締めるとより強く実感した。俺にはもう彼女しかいないんだと。だからこそこれまでも大きかった彼女の存在が、俺の中でより一層の存在感を増して強く感じられる。雨に濡れて時間の経過した身体は、冷たく冷え切っているはずなのにそれでも彼女の体温が僅かにでも感じられると心底安心した。ここにいる、俺の腕の中に……久遠ちゃんはいる。
「唯一信じられるキミがいてくれて、本当に幸せ……♡……キミは、俺といて幸せだって思ってくれてる……?」
ぜんぶぜんぶ、本心なんだよ。俺がキミに投げ掛ける言葉は全部が本当。だからキミも、嘘偽りのない言葉で教えて……?
「……もちろんです、千弘さんと一緒にいることが……私の幸せですから……♡本当にすごく幸せです……♡」
ふわり、と。いつもの優しい、随喜の滲んだ笑顔を向けられることに安堵して「キミを好きになって良かった♡」と胸の裡を吐露した。俺の本心を、言わずとも知ってくれているキミにならこの想いもぜんぶ本当だって伝わるよね。肌に張り付いた服をそのままに、何度も愛したベッドの上へと彼女の身体を押し倒す。
「ここまで来たらもうあとは……分かるよね?俺にはもうキミ以外に何もないの……だから、俺の想いを受け止められるのはキミしかいないんだよ。……ね、久遠ちゃん……俺の思うまま、キミを求めさせて……?」
「どうぞ、千弘さん。何度でも……遠慮なんていりませんから……♡全部、受け止めます……♡」
私だけ、とぽつりと呟かれた言葉に続いて彼女はまっすぐ俺の目を見て頷いた。了承の言葉を皮切りに、濡れた服の上から指を這わせる。それだけで、何度も快楽を教え叩き込んできたその身体は、淡く情欲の熱を灯して反応する。それはまるで……今まで俺たちが重ねてきた時間と愛の証左のようで、とてつもなく嬉しい。けれど、どれほど積み重ねてきても心が離れるのは一瞬なのだと今日俺は知ってしまった。だから心以外でも、しっかり彼女のことを繋ぎ止めてあげないと。キスしよう、と俺が言えば大人しく開かれる口も。何度貪るように口付けても、自分から離したりせずに応じて求めてくれるその舌も。上気して火照るその頬も、冷え切った身体にうっすらと滲む汗も、その汗の味すらも全部が愛しい。張り付いた服を、桃の薄皮を剥ぐようにして剥いてやれば微かに震えるその仕草のひとつまで、ぜんぶ……全部もう、俺のもの。そう思ったら祝着が止まらなくなって、思わずその肌に思いきり吸い付いた。白肌の上に散る紅い花に。うっそりと、目を細める。嗚呼、嗚呼……これでまたひとつ。
「……ふふっ、今までずうっとガマンしてきたけれど……もう気にする必要ないもんね?♡久遠ちゃん、俺だけのものになってくれるんだから……俺のって証、しっかりつけとかないと……♡」
「……は、ぁ……♡……ン、はい……なにも気にする必要、ありません……♡千弘さんだけのものなので…千弘さんの証、もらえてうれしい……♡」
嬉しそうなその声に、言葉に――陶然と蕩けていくその瞳に俺の心も弾んでいく。遠慮しないよ、と告げて肩に、首にと無数の痕を散らした。電気もつけないままの薄暗い部屋の中で、いつもより白さを増して見えるその肢体だけが、くっきりと像を結んで浮かび上がる。その白を穢すようにして散った、俺の徴。
「……はぁ……ふふっ、壮観だね……♡今まではお互い周りの目も気にしてはいたけれど……これからは何も気にすることないんだもん♡ほら……久遠ちゃんからもちょうだい、俺への愛のしるし……♡」
そう言ってせがめば、彼女は喜んで同じように俺の身体に愛の徴を刻んでくれた。撮影の際に隠しやすい位置などではなく、ただ……欲のままに。仕事もなにもしなくても、俺の貯金があればゆるゆるとふたりでただ愛し合いながら生きていくだけのゆとりはある。いつか彼女と夢見て得たいと思った、『俺の家族』やその他複数の夢を捨てればそんなことは容易に叶う程度には。彼女と出逢って改めた、刹那的快楽的な生き方に……今度はふたりで戻るだけだ。自らの服も脱ぎ捨てながら、その提案を彼女へ投げた。
「愛し合って眠って、目が覚めたらまた愛し合って……♡……はぁ……ふふっ、まるで天国みたいだって思わない?」
「……ふふ、はい……それはそれで、きっと天国みたいな心地でしょうね……♡」
「ふふっ、久遠ちゃんもそう思ってくれてる?……良かった、間違えてなくて……♡」
生まれたままの姿で向き合って、膝で、指で彼女の秘所をくすぐっていく。途端にくちゅくちゅとはしたない水音を上げて悦んでくれる彼女の膣内は、俺の指を嬉しそうに締め付けてまだ足りないと快感を強請る。こんな風に育った身体も、俺がたっぷり愛してあげたから。その事を忘れないでと口に出せば、その分ちゃんと責任取ってくださいと恍惚とした声が俺を呼んだ。
「ふふっ、いいよ……責任取ってあげる♡久遠ちゃんの身体の欲を埋めてあげられるのなんて、俺くらいしかいないもの……久遠ちゃんが俺を受け入れてくれてる限り、俺もたっぷりキミの求めに応えてあげる……♡」
応じて刺激を増やせば、もう収縮の仕方が変わる。きゅうきゅうと俺の指を絞って、熱を欲しがる動き。「もうイっちゃいそう?」と問えば、嬌声の合間に彼女は頷いて涙を浮かべながら声を振り絞り「も、イっちゃいそぉ……♡」と素直に答えた。素直に言えてえらいねと笑った俺は、親指を勃ち切った彼女の陰核に押し当て、与える刺激をさらに増やした。
「……おまんこの気持ちいトコたーっぷり責めて上げるから、お潮噴いてイっちゃおうねー……♡気にしなくていいんだよ…もうとうに濡れ切っちゃってるんだから、俺たち……♡ほーら……イっちゃえ、久遠ちゃん♡」
「ぁ……ッ♡ァ、も……イ、く……出ちゃう……ッ゛♡ァ゛、〰〰〰ッ♡♡゛♡゛♡」
俺の声に合わせるように、最愛の恋人は絶頂を迎えた。
「あは、すごいねぇ……背ぇ反っちゃってる♡やらしー声上げて、下品なカッコで腰揺らして潮まで噴いちゃって……ふふっ、そんなになりふり構ってられないくらい気持ち良かったんだ?いいよぉ、すっごくイイ……♡そんなキミの姿が見てみたかったの、俺……誰にも見せられないくらいみっともなく、快楽に耽るキミの姿が……♡」
背を反らして声を上げ、言われた通り……これまで恥ずかしがって嫌がることの多かった潮を思い切り噴き上げながら、それでもまだ快感を求めるように腰を揺らしてそれでもまだ快感を強請って自ら俺の指に擦り付ける、いやらしくてはしたない姿。俺が抑えて抑えて、彼女にすら言うことをせずずっと俺の胸の裡に抱えてきた最大の欲望。それに応え、変質した愛を受け容れて自らそんな姿を晒す恋人が愛おしくないわけがない。にゅちにゅちと強請られるままに果てたばかりのそこへ緩い刺激を与えて、俺は嗤った。
「もっと堕ちちゃおうよ、久遠ちゃん……♡誰の手も届かないほど深く、深く……俺とおんなじところまで、ね……?」
荒い息の合間に、涙の浮かんだ瞳で俺を見上げてすっかり融けた思考の中で、彼女は「……ちひろさんと、おんなじ……なら……堕ちても、いい……♡」と首肯する。その様子を見下ろして、満たされていくのを感じながら膣内から指を引き抜く。これよりも強い快感を教え込まれた彼女の身体は、物足りなさと寂しさからヒクついた。煽るように笑んで、大陰唇を撫でながら眉を下げて問いかける。
「……ね、久遠ちゃん……ここに何が欲しいの?久遠ちゃんはいい子だからちゃーんと言えるよね……♡」
「……っ、゛ぅ……ぅぁ……♡ン、はひ…ちゃんと言えます……♡……千弘さんの、おちんぽが欲しい……っ♡」
間髪入れずに答えた彼女は、もう俺の言葉に疑問を抱くことをやめていた。全部を受け容れて、おなじところまで本当に堕ちてきてくれる。
「ふふっ……いいよ、久遠ちゃんにあげる……♡……これからは、久遠ちゃんだけにあげる……♡俺のおちんぽ、俺の欲……ぜーんぶ、キミが受け止めてくれなきゃヤだよ……?」
もう仕事で他の女の子を抱くこともない。これから先の未来に、俺の腕の中にいるのは唯一信じられるキミだけ。手早くゴムをつけて、膣口に押し当てた。
「……今からこれが久遠ちゃんのお腹のナカに押し入って、めちゃくちゃにしちゃうんだよ……♡……覚悟、出来てる……?」
「はひ……覚悟、できてます……♡千弘さんの熱くて硬い……おちんぽで、めちゃくちゃにシて……っ♡」
「そっか……じゃあひとつになろ、久遠ちゃん……♡……身体の芯まで俺を味わって……俺なしじゃ生きられなくなって、久遠ちゃん♡」
ひとつキスを落としてそう言うと、無遠慮に彼女の身体のナカへ押し入る。何度も重ねた身体は、抵抗なしに俺の熱と欲を受け容れた。一度最奥まで埋めてから、ゆるく律動を始める。それだけで鼻から甘い声を漏らし、俺を甘く締め付けるその様子に、拒絶は見られない。
「……ふふっ、久遠ちゃんって俺のおちんぽホントに大好きだね……♡」
「……すき、千弘さんのおちんぽ大好き……千弘さんのことだけが、だぁいすき……ッ♡」
「ふふっ……俺も久遠ちゃんのこと、だーいすき……♡もっともっと蕩けて、気持ちい事以外考えらんなくなっちゃおうねー……♡」
緩やかに奥を突いてやれば、もどかしさから彼女の腰が揺れ始めた。もどかしいのかと問えば、甘えた声でもどかしい、もっと気持ちいいのがほしいと鼻を鳴らして答える。もっと強く、依存性の強い快感に慣らされ切った身体は――もうこの程度では満足できないのだ。
「もっと強い快感欲しいんだ?いいよ、俺もそう思ってたとこ……♡快感だけじゃなく、もっと確かに……もっと隙間なくキミと繋がりたいの……♡微かな隔てすらもどかしいくらいに、ね……♡」
言いながら膣内から熱を引き抜いて、つけたばかりのゴムを外した。それは、これまで彼女を愛する上で絶対に欠かすことのなかった配慮。恋人の身体を大事に想い、負担をかけたくなかったからこそ守ってきた絶対のセーフティ。神様を名乗る人物にゴムを消されたときですら、繋がることを躊躇し、一度はドッペルゲンガーをも生むことになった俺の剥きだしの欲望。はやくいれて、さみしいのと言葉と身体で示すようにぐずる彼女を言葉であやし、指先でぱくぱくと震える膣口をついと突いて。
「でも心の奥で思ってない?もっと欲しいって……♡そうだなぁ、例えば……ゴムを付けないままの、ありのままの俺と繋がりたい……ってさ?♡」
――俺は、最後の箍を捨て去って『人間』ではなく『獣』になる選択を彼女に科した。
「……心の奥、で……?ぁ……♡赤ちゃん、できちゃう……。でも……ほしい、もっとほしい……♡そのままの千弘さんと、繋がりたい♡」
「思った通り♡……いいじゃない、細かいこと考えるのやめちゃお……♡気持ちいことに関係ないコト、余分な事……俺以外の事、全部考えるのやめちゃお?思考を単純化して、お互いの事だけ考えて……♡……そうした時、あらゆるしがらみから解放されることが出来るんだから……♡」
最後のひと欠片の良心を覗かせて、踏み止まろうとする彼女に甘言を弄しながら。ナマのまま、最奥まで侵入する。快感から身を捩り、腰を引いて逃げようとした細い身体を抱き締めて耳元で「だぁめ、逃がさないよ?」と低い声で囁いた。逃げないと、一緒に堕ちてくれると言ったのはキミなんだから、受け容れて。そうしていつもより乱れる彼女に抽挿を繰り返し、最奥で熱を放つ。一滴も零さないで、と言った俺の言いつけを守るようにぎゅうぎゅうに締め付けてちゅうちゅうと飲み干すように収縮する子宮口に、最後の最後まで昂りを擦り付けて。
「久遠ちゃんに求められていること、久遠ちゃんに愛されてること……それが今の俺の価値だから。……お願い、ずっと離さないで……離れないでいて?」

◇ ◆ ◇

あの日から俺たちは愛し合っては眠り、目が覚めては愛し合って、毎朝毎夜ただひたすらに絶え間なく愛し合うだけの日々を繰り返した。そのうち俺にだけ特段素直な身体は、俺の宣言通りナマのおちんぽでしかイけないように躾けられてしまった。俺の快楽ですっかり脳髄まで浸して、おかしくなってしまった彼女は突かれるだけでイってしまう。とろとろに蕩けた声で、イき癖を揶揄すれば「千弘さんのナマおちんぽ、きもちぃから……♡」と甘えた声を上げるほど。無遠慮に加減もなく、ごちゅごちゅと奥を穿ってやると意識をトバしても尚――彼女の子宮は絶頂後も甘イキを繰り返し、ザーメンを注がれるたびに身体をひくひくと震わせる。
意識を失った彼女を見下ろして、俺はそっと自責と後悔で涙を流す。本当に可愛くてやさしくて、可哀想な俺の恋人。俺の傍にいて、俺と一緒に堕ちる覚悟をしたばっかりに……もう一生、離してあげられやしない。互いに正気に戻ったら狂って叫び出してしまいそうな環境に身を置いたまま、俺の慟哭のような衝動任せの愛をこれからもずうっと、ずーっと一生一緒にいて、受け容れ続けて。
俺をひとり、この苦しい現実から夢の狭間につれていく縁として――これからも俺を愛し続けて。そんな滂沱の如き白濁の欲望から、ふたり逃げる術を持たないまま。真綿のようなやさしい愛で包んで、このままふたりで溺れよう。